商業デザイナーという仕事について(ニットデザイナーの場合)


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日本編物文化協会「Amu」掲載

私はニットデザイナーとして25年以上手芸雑誌で作品を発表していますが、それは商業デザイナーという仕事です。出版社や手芸メーカーから来シーズンの新作の毛糸が発表される前に、その毛糸で作ったものをデザインします。たいていは毛糸の種類と作るアイテムやイメージが決まっているので、その毛糸に合わせてデザインを考えて制作し期日までに納めます。(デザインだけして制作はニッターにお願いする場合もあります)

有名なニットデザイナーは下田直子さん風工房さん岡本啓子さんきゆなはれるさんなどでしょうか?やはり皆さん美大・服飾学校・デザイン学校を出られてアパレル経験があったり、早くから才能を発揮してこの業界で長くご活躍されています。下田先生の元では以前ニッターとしてお仕事をさせていただき、岡本先生ときゆな先生にはヴォーグ学園のデザインクラスで教えていただきました。

私は25年くらい前に日本手芸普及協会の手編み指導員を取得したあと、バンタンデザイン研究所のニットデザイン科(夜間コース)を卒業していますが、当時バンタンのクラス40人位の中で「手芸本で作品を発表するニットデザイナーになりたい」という人は私以外に一人もいませんでした。皆さん企業などへの就職希望や、すでにニットデザイナーとして働いている方、マーチャンダイザー(仕入れ販売係)や営業の方も何人かいらっしゃいました。一般のOLなども多くいたように思います。バンタンでは商業ニットデザイナーになる方法を実習しながら具体的に学ぶことが出来てとてもよかったのですが、3級、2級、1級と進むうちにどんどん人数は少なくなり、最後は3人しか残りませんでした。そのうち一人はすでにアパレルの現役ニットデザイナー、もう一人はCADが出来たのでニット会社に就職しましたが、もう10年位前に日本国内のニット工場がほとんど廃業してしまったので辞めてしまいました。そして現在はバンタンにニットデザイン科はありません。(文化服装学院などはまだあります)

バンタンの学生時代から『日本ヴォーグ社・毛糸だま特派員』になったり『黒ゆき子のセーター塾』へ応募して掲載されたりしていた私は、編集部の方から「今度TVチャンピオンに出てみない?」とお誘いを受けたりしたのですが、3人の子育てや夫の2度の海外赴任、自身の病気で何度も中断してしまい(途中ビーズに転向して『ブティック社・ビーズdeビーズ』に掲載) 、結局本格的に再開できたのは2007年、『日本ヴォーグ社・下田直子のビーズ編み』と『手編みに夢中』のニッターのお仕事からです。その後は『日本編物文化協会・Amu』『日本ヴォーグ社・ステッチイデー』『フェリシモ・クチュリエ』などでオリジナル作品の発表やサンプル制作などをずっとやらせていただいてきました。手芸メーカーや東急ハンズなどの企業とも一緒にお仕事をさせていただいています。(2015年に日本手芸普及協会 手編み師範の資格を取得しました)

私はアート系のニットを作るよりも、流行をキャッチしながら毛糸の良さを生かして、編んで楽しく着心地の良いニットを作るのが好きです。商業デザインの仕事は「毛糸やアイテムが指定される」「色数が決まっている」「毛糸を引き揃えたり、段染糸の色の出方を調節しない」「誰にでも同じように編める編み図を考える」「作り方ページが多くなりすぎない」などの制約がありますが、やはりお客様にこれを編みたい!素敵!と思ってもらえた時はとても嬉しいものです。それに、新作の毛糸を誰よりも早く手にして、自分の好きなデザインで作って、お金をもらって皆さんに喜んでいただけるなんて、編み物好きにとってこんな幸せな仕事は他にないなぁと思います。

でも、やはり世の中には自分のこだわりを強く持って「この毛糸とこの毛糸を組み合わせて自分の好きな作品だけ作りたい」という方も大勢いらっしゃいます。そういう方は商業デザイナーという職業には向かないので、たいていアーティストとして個展を開いて作品を販売したりオーダーメイドを受け付けたり、展示会に参加したりしていらっしゃいます。また、今の風潮からシンプルな作品を好んで作っていらっしゃる方もいますが、そういう方も商業デザイナーになるのは難しいと思います。なぜならもう既にそういうデザイナーはたくさんいるので。シンプルなニットを作って企業とお仕事が出来るのはすでに現在ニットデザイナーとしてご活躍されている方のみです。

そんな現状を踏まえて、ご自分のなりたいものに合わせて作品作りの方向性を考えていただければと思います。

 

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2016-12-07 | Posted in ハンドメイド作家としての心構え, 生き方Comments Closed 

 

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